2・5次元の彼女
景斗と落ち合うと、暇つぶしがてらに近くの洞窟へ入った。
ここのモンスターが落とすアイテムはそこそこ使えるものが多い。
大して強い敵ではないので、そこまで気張って戦う必要もないのだが、気もそぞろな私は敵の攻撃を受け続けて、みるみるうちに体力が減っていった。

気が付くと瀕死の状態の私を見て、さすがの景斗も不思議に思ったようだ。
『ユウさん、今日調子悪い?』
気使う言葉が飛んできた。
『ごめん、少し気になることがあって』
『だいじょうぶ? 僕でよければ相談に乗るよ』

景斗はいつも優しくて、ついつい甘えたくなってしまう。
相談をすれば気が楽になるだろうか。
ひとりじゃ断ち切れない心細さ。
彼なら、私がほっとするような言葉をかけてくれる気がする。

『相談、ちょっと長くなってもいい?』
私の前置きに景斗は『いいよ』と答えてから、間髪入れず『それとも』と切り出す。『直接会って話した方がいい?』


直接会う……
今までは、ゲームの中が当たり前だったのに
いつからか、そんな選択肢も考えるようになってしまった。

会いたいと思った。
甘えたかったのかもしれない。
会って、顔を見て、安心したいと思った。

『いつなら会える?』私が尋ねると
『仕事帰りならいつでも』景斗は答えた。
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