幸せそうな顔をみせて【完】
 耳を侵す蜜音も最初は恥ずかしくて仕方なかったのに、それさえも分からなくなるくらいに副島新に翻弄されていた。シーツの上で何度も弧を描く私を副島新は見つめていて、その視線さえも分からなくなる。


「綺麗だ。もっと、綺麗な葵を見せて」


 そんな言葉に私の目の前が真っ白になったのはそれからすぐのことだった。目の前でパチッと何かが弾けるような音がして、目の前が真っ白になり、大きなうねりに身体も心も飲み込まれてしまった。


 強張る身体は指先から力が抜けていく。


「葵は俺のものだから」


 ぐったりと身体の力が抜ける私の身体をキュッと抱き寄せながら、副島新は金曜日の夜と同じ言葉を零しながら私の身体の最奥まで一気に自分を埋めたのだった。独占欲に塗れた言葉なのに深い愛の言葉に感じてしまう。副島新の言葉に私の身体は素直に反応した。指先さえも動かないと思ったのに、私の身体も副島新を求めていた。


 身体の奥の熱が…ゆっくりと動き、副島新を包んでいくのを感じる。漏れそうになる声を唇を噛み耐えていると、副島新は唇を重ね、ゆっくりと体の力を抜かせていく。


「大丈夫か?」


 大丈夫じゃない。好き過ぎて、感じ過ぎておかしくなりそうだった。目の前には私を欲しがる男の顔をした副島新の顔があって、ドキッと胸の奥が疼き、私はこんなにも貪欲だった。


「もっと新が欲しい」


 好きという言葉は…こんなにも独占欲に塗れていた。

 
 
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