幸せそうな顔をみせて【完】
 自分の中にあった副島新を求める独占欲は深く激しく私の中で燃え盛る。一度灯した炎は一気に天へと駆け上がるかの如く愛情による快楽を求めていた。求めていたのは身体の気持ちよさではなく心。もっと深く愛されたいと思う私はこんなにも深く貪欲な独占欲を持っていた。


 でも、この言葉が副島新の身体に火を灯したのは間違いじゃない。副島新は動きを止め、私を見つめると、フッと笑うと、額に汗を滲ませながら綺麗すぎる微笑みをくれるのだった。口の端を少しあげ、妖艶ともいえる表情を浮かべると捕食者の如く私を見つめた。


 鋭い視線に晒されながら…。私は息を呑む。


「上等。期待していい」


 私は知らなかった。


 副島新の中にこんなに激しい感情があるということを。そして、自分の言葉に後悔してももう遅いということを。


 堰を切ったのは私だけではなかった。副島新の堰は私が思う以上に厳格な理性によってコントロールされていた。そのコントロールの箍を外したのは私。そして、その意味を身体を持って知る。トロトロに溶け切った身体を深く強く揺らされながら、私は副島新の首に腕を回すことしか出来なかった。


 目の前は真っ白になったかと思うと、また身体が揺らされる。最後は腕を首に回す力さえなくなった私の腕はキュッと流されないようにシーツを掴んだのだった。



「もうだめ」


 そんな私の言葉を綺麗に聞き流した副島新は私の耳元に悪魔の声を響かせる。


「期待していいって言ったろ」


 
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