幸せそうな顔をみせて【完】
 本社営業一課は仕事は神的に出来て、いつも成果の進捗率は桁外れ。他の課、支社の追随も許さない。そんなストイックな場所。同じ営業の仕事をしているからには憧れを持たないとは言わないけど、小林主任の仕事ぶりを見ていると、まだまだ自分では物足りないと自覚する。


 小林主任は仕事が出来るだけではない。


 優しく思いやりがあり、一緒にいると周りの空気を明るくする。それに端正な顔をしていて、社内での人気も高い。今、この支社での結婚したい社員ナンバーワンと言われている。小林主任は知らないけど、ここには隠れファンクラブもあるし、既に告白して玉砕した人もいる。


 振られた女の子も誰一人悪く言わないし、もっと好きになったのか、ファンクラブを結成したらしい。


「何か困ったことない?」


 急に降り注ぐ優しい言葉に一瞬驚いた。小林主任は今までの主任と違ってとっても気さくで普通に話しかけてくる。そこに上下の差を感じさせないのが凄いと思う。今までの上司は数字は上がらないのに、周りには数字を求めるというどうしようもない人だった。


 でも、小林主任は数字は桁外れ。もしも、同じ課の物が何か困ったら、その社員の心に寄り添い叱咤激励し、もしも失敗したら、自分が率先して矢面に立って守ってくれる。


「さっきから力が入って仕事に頑張っているけど、少しは肩の力を抜いた方がいい。一度休憩を入れた方が捗るよ。それに大変なら俺も手伝うよ」


< 142 / 323 >

この作品をシェア

pagetop