幸せそうな顔をみせて【完】
 ちょっと…。話の展開に付いていけない私は今の副島新の言葉をもう一度頭の中で整理する。確かに私は副島新が好きで、『俺のもの』って言われて嬉しかった。でも、お持ち帰りとか、堪能とか…。余りの展開の早さについていけない。そうでなくても恋愛は苦手で元彼とも自然消滅してしまった。


 そんな私がいきなりの展開についていけるはずもない。


「でも…」


「明日は土曜だし、用事はないだろ」


 図星だった。私の週末は寂しいもので一週間分の家事をして終わることが多い。楽しみといえば、全部終わった後に飲む缶ビールくらい。ちょっとだけ…いやかなり可愛らしい女の子とは掛け離れている。でも、だからと言って、掠ったようなキスはしちゃったけど何も始まってない私が副島新のマンションに行くなんて考えられない。



「あの…私って今どういう状態なのかな?」


 私の的外れな言葉に副島新は静かにそして、かなり深めの溜め息を零す。溜め息の後に私をチラッと見た表情が…残念って感じだった。残念なのは私も分かっている。でも、教えて貰わないと分からない。副島新が私のことを好きっていうのさえ、夢を見ているのではないかとさえ思うくらい。


「今日は機嫌がいいから説明してやる。特別サービスだ。次回からは自分で考えろ」



 優しくない言葉に私が頷くと副島新は私の方を見つめ、さっきまでの俺様発言が嘘のように優しい声を響かせた。


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