幸せそうな顔をみせて【完】
 私はベッドの中で何度も溜め息を繰り返す。溜め息で部屋の中が憂鬱で埋まっていく気がする。


 自分がどうしたらいいのかとどんなに考えても答えは出なかった。気持ちを切り替えるというのも出来なくて…。苦しくなるだけだった。唇を噛むと涙が零れた。噛んで痛いから、涙が出たのではないと分かっているけど、噛み過ぎたせいだと自分に言い聞かせる。


「もう寝なきゃ」


 ベッドの中で目を閉じるけど寝ることは出来ずに何度も寝返りを打つ。いつのまにかうつらうつらと寝たような気はするけど、気付くともう朝になっていた。時計を見て、もう一度溜め息を零し私はゆっくりと重たい身体を起こしたのだった。ベッドの上にいる私が視線を移すとテーブルの上の置いてある鏡に自分の姿が映った。


 寝起きというのもあって、ボサボサに乱れた髪。血の気のない肌は青ざめているようにさえ見える。目の下には薄らと隈もあって見られたものじゃない。唇は寝ている間にかさついていた。


 鏡の中の私は明らかに具合が悪い。寝不足というのもあるけど、それだけではない心の痛みが表情に現れているような気がした。


「仕事に行きたくない」


 本気でそう思った。身体の具合も悪いし、それに、こんな状態で副島新に会いたくない。でも、今日は大事なアポが入っている。私が頑張ってきた仕事だから、契約に結びつけれればと思っている。簡単じゃないのは分かっている。でも、逃げてはいけないことだった。


 

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