幸せそうな顔をみせて【完】
15 甘い時間
 バスルームに入ると私は袋の中の物を出してみた。

 
 淡い水色のパステルカラーの半そでのマキシ丈のワンピース。化粧品一式。何故か、私が普段使用しているもの。クレンジングから洗顔料。化粧水。乳液に美容液。トラベルサイズでなくてどれも普通のサイズの物。その横の袋には下着らしきものも入っていて…泊まるのに必要なものは全部入っていた。


「凄い。これ全部買ったの?」


 そんな呟きを零しながら視線を移すと、洗面台の副島新の歯ブラシの横には同じ歯ブラシの色違いのピンクの歯ブラシが新しいまま横に立ててあるし、副島新のタオルの横には淡いピンクのタオルまで置いてある。これは私のために用意したものだと分かる。


 これなら自分の部屋に戻る必要はなかった。


 バスルームには女性用のシャンプーも置いてあった。


 至れり尽くせりとはこのことだと思う。志摩子さんは雑誌の編集を仕事にしていて、元はモデルなら…こういう美容関係にも詳しいのだろう。シャンプーはドラックストアとかで売っているものではなく、美容室で見るようなスタイリッシュな瓶に入っているし、横に置いてあるのは欲しかったけど中々買うことの出来なかったヘヤパックまで置いてある。


 私はヘアパックの入った容器を手に取るとマジマジと眺めてしまった。


 自分の部屋なら浴槽にお湯を張り、バスミルクでもいれて楽しみたいけど、今日はそんな時間はない。急かされているわけではないけど、少しでも副島新の傍に居たいと思う気持ちの方が強かった。
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