幸せそうな顔をみせて【完】
 私を化粧を落としてから服を脱ぐとそのままバスルームに入る。


 頭から熱いシャワーを浴びて、ゆっくりと一日の疲れを癒すかのように身体をお湯で温め、べたっと張り付くような汗もお湯に流す。肌理の細かい泡をしっかり立てながら身体も髪も全身を綺麗に洗い上げるとスッキリした。


 用意して貰ったボディシャンプーもシャンプーもヘヤパックもとってもいい香りで洗うだけで癒されていくように感じた。アロマ効果が次第に私の身体も心も緩ませていく。熱めのお湯を身体に流しながら…私は生まれ変わったような気がしていた。


 指先の爪までも副島新のことでいっぱいで…。そんな自分のことを好きだと思った。


 バスルームを出て、一瞬化粧をするかしないかで迷ったけど、そのままでリビングに行くことにした。普段からそんなに濃い化粧をする方ではないけど、すっぴんというのは恥ずかしい。でも、それ以上にさっぱりとしたから化粧をしたくないという気持ちの方が強かった。


 軽く髪を乾かしてからリビングに行くと。副島新はテレビを見ながらソファにゆっくりと身体を傾けていた。手にはビールは無く、代わりにウーロン茶を持っていた。バスルームから出ていた私にニッコリと笑うとスッと立ち上がり、何も言わずにキッチンの冷蔵庫から私の好きな水を持ってくる。


「ほら。これでいいか?」


「うん」


 私は前のようにその場の床に座ろうとすると、それを制止するかの副島新がそのまま抱き上げてソファに座らせた。そして、ギュッと抱きしめたのだった。
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