幸せそうな顔をみせて【完】
 息も絶え絶えになってベッドにうつ伏せたのはいつのことだろう。それは一瞬で、私の身体はまた副島新の腕に抱き寄せられる。そんな甘い時間は短距離走をしているかのように息を切らせた。そして、気付くと私は疲れ切ってまた寝てしまっていたようだった。昨日もたくさん寝たのに、今日も寝てしまうのは私が疲れ切っていたから。


「ごめん。寝てたみたい?」


「ちょっとだけだよ」



「そう」


 抱き合ったそのままで私は副島新の腕の中にいた。少し汗ばんだ肌に頬を寄せると副島新はキュッと私の身体を抱き寄せる。触れ合う肌の心地よさに目を閉じた。サラッとしていたシーツも依れていて身体に巻きついているのはどれだけ激しかったかを教えてくれる。



「悪い。ちょっと無理をした。自分が止まらなかった」


 副島新は私の髪に指を通しながら、額に唇を落す。そんな姿を見ながら愛しさに包まれる。いつも冷静で自分を崩すことがない副島新が私を思い、自分が止まらないなんて贅沢を私は感じていた。


「幸せだった。とっても」


「そっか」



 それだけ言うと副島新は私を抱き寄せた。そして、耳元で囁くのは甘い言葉…ではなくて…。


「少し痩せすぎ。ちょっとここが寂しくなった」


 そう言うと私のささやかな胸に触れたのだった。もちろん、私が鉄槌を落したのは当たり前のこと。副島新はクスクス笑いながら私をもう一度抱き寄せる。


「それだけ元気ならもう一回いいよね」


 悪魔のような微笑みだった。
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