幸せそうな顔をみせて【完】
 小林主任の言うとおり副島新は『ただの同期』ではない。このまま時間を重ねていけばきっと私の傍に一生いてくれると思っていた人だった。


「はい。知っていたのですか?」


「知っていたのは副島の気持ちの方。前に一緒に飲んだ時に副島の瀬戸さんに対する気持ちを聞いてた。

 でも、この間から二人の間に流れる空気が違ったから副島が男気を出したかと思って喜んでいた。結構前に瀬戸さんのことを聞いていたから、何をしているんだとは思っていたけど、やっと男気を出したんだと思ったんだ。でも、すぐ後に副島に辞令が出て正直俺も驚いた」


 副島新は何かの時に私のことを小林主任に話していたのだろう。


 本社営業一課。


 社内でも選り抜きの社員が集められ、営業力は桁外れ、後の会社の中枢を担う実力者しか入れないという精鋭の集まる場所。営業の誰もが憧れるその場所は入りたいと言って入れる場所ではない。


 そこに副島新が配属される。


 本当なら祝福しないといけないことだと思う。副島新が仕事に真摯に向かってきたのを知っているからこそ、その実力を発揮して欲しいとも思う。もしも、まだ付き合い出す前だったら…きっと私は心から笑って見送ることが出来たと思う。


 でも、今は…。副島新の温もりを知ってしまった今は…。自信がない。


「凄いことですよね」


「ああ。本社営業一課は仕事の面で自分を伸ばせる場所だと思う。副島ならきっと期待に応えるだろう」
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