幸せそうな顔をみせて【完】
17 真実の恋
 私も副島新ならどこに行っても十分に自分の力を発揮出来ると思う。それは本社営業一課であっても大丈夫だと思う。でも、私はどうなるのだろう。離れていて大丈夫なのだろうか?また、尚之の時と同じように仕事を理由に自然消滅するのだろうか?


「申し訳ないけど、瀬戸さんを本社の営業課に転勤させることは出来ないから」


 そんなこと私にも分かっている。私と副島新は違う。本社営業一課は新規開拓が主で、新規開拓をしたことのない私が行ける場所ではない。実力の違いだから仕方ない。それなのに小林主任は申し訳なさそうな顔をして私を見ていた。何か言いたげだったけど、何も言わずに小林主任はニッコリと微笑んだ。


 何も言わない優しさだと。私は分かっている。突発的に知ってしまった真実に私は翻弄されながらも必死で表情を崩さないように努力をした。


「もちろんです。では私はこのまま営業室に戻りますが、小林主任はどうされますか?」


「もう一件回ってくる」


「では私だけ戻ります。今日は本当にありがとうございました」


「ああ。今日は納品で疲れただろうから、残務が終わったら定時に帰っていい」


「はい。分かりました。では失礼します」


 小林主任と別れると私は営業室に戻った。自分の席を見ると、同時にその横に副島新の席も見えて…そこはいつも以上に綺麗に整理整頓されている。よく見るといつも机の横に置いてあったファイルは消えていた。
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