幸せそうな顔をみせて【完】
「本気なの?結婚とか子どもとか。昨日、付き合いだしたばかりなのに」


 付き合い始めてすぐに私に突き付けられる現実を私はどうやって受け止めればいいのだろう。


 客観的に見て、副島新は仕事も出来るし、多少我が儘な部分もあるけど、性格も温厚な方。見た目のかなりいいし、恵まれた容姿だからか、私が何度も橋渡しを頼まれたほどの人だった。でも、今日の…。いや昨日からの副島新はどうも可笑しい。可笑しいと言うよりは酔いが醒めてないという感じかもしれない。


 かなりの量のお酒を一緒に飲んだのは覚えている。副島新のマンションに帰っても飲んでいた。でも、時間はかなり過ぎているのだから、アルコールに対しての酔いは醒めていると思う。でも、違った意味での酔いは醒めてないのかもしれない。


 恋に酔う。


 でも、そんなのは副島新には似合わない。


 結婚はともかく…子どもとかはまだ私の頭の中にはなかった。でも、副島新の頭の中には私の知らない設計書はどこまで作られているのだろう。


「俺が嘘とか誤魔化しとかが嫌いってこと知っているだろう」


 確かにその通りだった。副島新は真面目で嘘が嫌い人だった。嘘を吐いたり、その場の勢いで誤魔化したりはしない。だから、飛躍な契約を取って来ることはないけど、取ってくる契約は十分に会社を利益を得るような物ばかりで、長期的に見れば、会社の利益を十分に弾きだしている。

< 68 / 323 >

この作品をシェア

pagetop