幸せそうな顔をみせて【完】
「これならどうだ?そんなに派手でもないから仕事にも困らないだろ。それに今までの中で一番葵に似合っている」


 そう言ったのは淡いピンクサファイヤの石の嵌め込まれた指輪でそのピンクの石の横には輝くばかりのダイヤモンドが並べられている。


 確かにこれなら派手ではないから仕事の時も着けてられるけど、可愛らしい外観の割には可愛らしくない値札がついている。ダイヤも異様にキラキラ輝いているからクラリティが高いのだろう。


 エンゲージリングと言っても可笑しくないくらいの品物に私は息を呑む。ピンクの淡い石はとっても可愛いとは思うけど、どう考えても昨日から付き合いだしたばかりの私には勿体ない。これは何かの記念日になら分かるけど、付き合いだして初めてのプレゼントにしては高価過ぎだった。


「高いと思う」


 私はハッキリと自分の意見をいうと、副島新は私を見つめ、店員さんの方にニッコリと微笑んだ。断ってくれるのだろうと思って自分で指から外そうとすると、副島新の手がそっと私の手に添えられた。驚いて見上げると、綺麗すぎる微笑みが私に降り注ぐ。


「すみません。これにします。このままつけて行ってもいいですか?」


「え?」


 問答無用と言う感じで、私の指に嵌められたままの指輪は一度も外されることなく指に嵌ったまま。店員さんが一度磨きますと言ってくれたのに、それさえも必要ないとばかりにニッコリと笑う。


「ありがとうございます。大丈夫です」


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