幸せそうな顔をみせて【完】
 こんなに高い指輪なのに平然としている副島新を見ながら、私は小さく溜め息を零す。どんなに言っても、この状態で『本当にいらないんです』とは言えない雰囲気だった。私は蚊帳の外で淡々と物事は流れている。店員さんは『ご購入』という事柄で喜んでいるし、副島新も『納得の品』ということで満足している。


 客観的に見て、自分の薬指に嵌っている指輪はキラキラと輝いていてとっても可愛い。シンプルなのに可愛らしさがあって、でも、上品で。私の年齢からすると少しだけ背伸びしたような指輪に視線が奪われる。


 私が好きなのを選んでいいと言いつつ、結局は副島新が指輪を選んだ。でも、副島新が一番似合うというだけあって違和感はないし、まるで私の為に誂えたかのような指輪だった。こんな状況でなかったら小躍りするほど嬉しく思うだろう。


 でも、値段は全く可愛くないし、付き合って二日目というのも引っ掛かる。自分の指に嵌っている輝きが眩すぎた。


「本当にいいの?」

「ああ」


 会計が終わり店を出ると、副島新はちょっとだけ顔を緩め小さく独り言のような言葉を呟く。私の耳に微かに届いたのはいつもよりもかなり低めで小さな声。


『よかった』


 私に向けられたのではなく、自分に向けられたような言葉だったけど、妙に心の奥に響いてくる。そんな言葉を聞きながら私は何も言えずにただ副島新の横をゆっくりと歩くのだった。


「ありがとう。でも、本当にいいの?」


「ああ」

 
 副島新は私の指に自分の指を絡め、ニッコリと笑ったのだった。
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