ご懐妊は突然に【番外編】
匠さんの首に手を伸ばしてそっと唇を重ねると、仄かにアルコールとミントがまじりあったような香りがする。

何度もキスをしているけど、匠さんの唇の感触を味わうと未だに胸が高鳴ってしまう。

私は唇を離そうとするが、匠さんは頭を抑え込んで更に深く口付ける。

するりと歯列を割って匠さんの舌が口内へと侵入してきた。

私も待ちわびていたように舌を絡め返す。

頭の中がジンと甘く痺れ思考が停止して私はキスという行為に夢中になる。

足に力が入らなくなって、匠さんの腕に必死にしがみついた。

私が苦しげに息を着くと、匠さんはようやく唇を解放する。

「遥はやっぱりかわいい」

匠さんは目元を綻ばせると、両手で頬を覆い、チュっと短いキスをする。

「初めてキスした時と変わらないな」

「うどん…食べに行った時?」私は呂律の回らない口調で尋ねる。

「あれ、ショップの試着室じゃなかたっけ?」

「違うよ。初めてあった日だよ。夕飯食べた後、六本木で」

想い出したのか、あー!と言って匠さんは目を大きく見開いた。

「あんなおぼこかった遥に会った初日から手を出すなんて、俺も結構鬼畜だな」

…まったくだ。どれほど私がビビってしまった事か。

しかし悪びれることなく、あははーとライトな感じで匠さんは笑い飛ばした。

「まぁまぁ、いいじゃないか。結局結婚したんだから」

そして私をちゃんと愛してくれた。

私は胸がいっぱいになり匠さんの腰にギュッとしがみついた。

「本当は思いっきり抱きたいけど、双子ちゃんがビックリしちゃうから、今日のところはソフトにしておこう」

と言いながら匠さんはソロリとドレスのボタンに手を掛けた。

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