暫定彼氏〜本気にさせないで〜
あれから業務に戻ると直ぐに樋山さんから社内メールが届いていた。


内容は時間と会社から少し離れたパーキングの場所だけを記した非常に簡潔且つ業務的なものだった。


きっとその待ち合わせ場所を選んだのもひと目に付かないように配慮したんだと思う。


勿論、有能な秘書は読んだ後このメールを削除するようにとの指示も忘れてはいない。


はぁ……


あの樋山さんと食事なんて何話せばいいのかな。


共通の話題なんて天気の話くらいなんじゃないの?


気が重いなぁ……。


急な残業で予定をキャンセルしなきゃとかにならないかなぁ……


と言う細やかな願いも虚しく、予定通りきっちり定時に終え


そして恐らく伯父の計らいだと思うけど、日頃定時なんて有り得ない樋山さんも私が約束の場所に行くと既に車を止めて待っていた。


「どうぞ。」


わざわざ運転席から降りてきて助手席を開けてくれる。


これも秘書という職業病の一つなのだろうか?


国産車ではあるものの品の良い高級車のシートはとても座り心地が良かった。


座り心地の良さについボケっとしていたら


「失礼。」


シートベルトを締めてくれた。


目線は合わないとは言え凄く近い距離に樋山さんの顔があって緊張する。


スパイシーな大人の香りが鼻を掠めた。



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