嫌いになりたい
「俺も一応男だし…。それなりに知ってることもあるし………宇佐美さえ良けりゃ、その………あの…」


なぜか口ごもる彼


「大丈夫だよ。永野くんのことは頼りにしてるし、あたしは本当に大丈夫だから」


安心させるように微笑み、彼の後ろから来た同じ事務の子に手を振る


「おはよう、富永さん」


富永花梨(とみながかりん)

採用されて二年目の後輩


「宇佐美さん、おはようございます。永野先生もおはようございます」


「おはよーございます」


「永野くん、あたし彼女と行くね」


「え………。あ、ちょっ…」


何かを言いかけようとした彼を残し、二人で事務室へと向かった



※※※



「宇佐美さん」


「ん?」


事務室に着き仕事の準備をしていると、同じく向かいに座った富永さんに声を掛けられる


「さっきの、良かったんですか?」


「さっきの…って?」


意味が分からず聞き返すと、エントランスの方を向いた彼女の視線の先を追った

そこには、靴を履き替える永野くんの姿
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