嫌いになりたい
さっきは誤魔化すようにして富永さんに逃げたけれど

やっぱり、いつもの彼とはどこか少し違う気がする


「………だって、永野くんだもん」


彼とは同僚

それ以上でも、それ以下でもない


「あ、そーだ!」


パチンと両手を鳴らすので首をもとに戻すと、ニッコリと微笑む彼女と目が合った


「宇佐美さん、今度の金曜日暇ですか?」


さっきまでの会話はどこへやら

まあ、切り替えの早さが彼女のいいところでもあるのだけれど


「………暇…」


基本的に飲みに行かない限り、何の予定も入っていない

25にもなるのに、寂しい生活だとは思うけれど

親元も離れているし、一人で生きて行く分には何も支障がない


「人助けだと思ってお願いします!」


鳴らした手をそのまま顔の前に持って行き、申し訳なさそうにあたしを見る


「………嫌よ」


「そんなこと言わずに!今回だけでいいんです!一人足りなくて…。すぐに帰ってもらってもいいので、顔合わせだけ………お願いします!」


これだけ拝み倒されても行きたくないもの

それは


『コンパ』


恋愛したくないあたしにとって、不要な催し
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