嫌いになりたい
「ん?」


少しだけ緩められた右手の隙間から、困ったように笑う永野くんの顔が覗く


「………帰ろ」


健太にも聞こえるような大きさで、短く呟いた

とりあえず、この状況から脱したい

大きく頷きあたしの後頭部から手を離すと、手首を握り締めていた左手があたしの右手を絡め取る

永野くんと二人だったら、今すぐにでもこの手を振り払っていた

けれど、今は健太から離れるのが最優先

少しだけ長い溜息を吐き、健太の方を向いた


「それじゃ、元気でね」


当たり障りのない別れ文句


この先があることはないんだと


そんな意味を込めて笑顔で手を振った


「え………あ…。亜弥っ!」


健太の声は聞こえないフリ

歩みを止めることはしない

いつまでも背後に視線を感じたけれど、最後まで振り返ることはしなかった
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