オフィスの華には毒がある
「じゃ、はい、これで、交換!」


楽しげに笑う斉木君に見とれた一瞬の隙に、わたしの手から紙コップは奪われ、代わりにずっしりと重みが乗る。


見ると、わたしの手にはホットココアの缶。


「かわいい女の子は、ブラックコーヒーより、ココアです!」


なにそれ、と言い返す間もなく、


「じゃ、営業いってきまーーーーす!……うまいなー、那奈さんエキス配合だし」


わたしから奪ったコーヒーを一口飲んで、ぶんぶんと手を振り、駆け出していく斉木君。



…ずるくない?


一応、自分への戒めをこめて確認するけれど、斉木君は勿論わたしの事が好きなわけじゃない。


誰にでも、こうなんだ。


バイトの若い子から、掃除のおばちゃんにまで、その軽口は平等で。

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