オフィスの華には毒がある
見た目よりもずっと美味しいスコーンをかじる。

素朴な粉の味がしっかり感じられるもの。


隠し味のイチゴジャムがいい仕事をしている。


紅茶を淹れるために席を立ち、戻って何気なくパソコンを覗くともうコメントがついている。



『いいなぁー、ワークショップ!あたしはゴールデンウィーク中にアロマオイルで作る手作りソープのワークショップ狙ってるんだけど、毎回人気らしいからきっとダメかも…… スコーン、美味しそう!あたし全く料理出来ないからエナさん尊敬しちゃう***たまこ』


たまこさんのコメントにニヤニヤしつつ、返信をする。


わたしの毎日は、こうして平和にすぎていく。

波乱万丈なんて全く羨ましくないし、平穏無事が一番。


わざわざ持ち帰ってきたココアの缶は、キッチンのごみ箱で静かにしている。


家に持ち帰ってきた時点で、もうダメなんだけどね。

あまりにも潤いのない日々。恋愛の真似事のひとつや二つ、あったってバチは当たらない、と開き直るわたし。
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