印堂 丈一郎の不可解な生活

諦め悪く、またも丈一郎ににじり寄るグール。

アスファルトに這い蹲ったままの丈一郎には、為す術もない。

逃げる事も反撃もできずに、生きたままグールに食われるだけ。

グールは悠々と歩み寄り、丈一郎に食らい付こうとして。

「！？」

突然暗闇に包まれた。

丈一郎が咄嗟に脱いだダウンジャケットによって頭を覆われてしまったのだ。

視界を塞がれて混乱するグール。

その隙に。

「オラァッ！オラッ！オラッ！オラッ！オラッ！オラッ！オラッ！」

残った片腕と片足をフルに活用して、丈一郎は目隠しの上からグールを殴打した。

殴り、蹴り、踏み付け、肘を落とし、膝を入れ、叩き付ける。

人間相手なら殺してしまわないように手加減もするけど、相手は人食いの化け物だ。

殺してしまってもいい。

寧ろ殺さなきゃならない！

無茶苦茶に暴行を加え、僅かにでも動いているうちは手を止めなかった。