印堂 丈一郎の不可解な生活
どのくらい、殴り、蹴り続けていたんだろう。

ようやくグールの動きが止まった。

腐臭のする体を地面に投げ出し、痙攣すらしていない。

その様子を確認して。

「っっっっ…」

丈一郎はへたり込み、そのまま大の字に倒れた。

やっつけた。

グールを倒した。

「マジかよ…グールってよぉぉお…普通ザコモンスターだろうよぉぉお…」

呼吸を乱しながら呟く。

ゲームと違ってあっさりと倒せなかったのは、丈一郎が勇者でも英雄でもなかったからか。

何にしても、これ以上の被害者が出る事はなくなった。

でも…。

「くそぉ…咬まれちまった…どうすりゃいいんだ俺…」

仰向けからうつ伏せになり、地面を這いずる丈一郎。

その背後で、ダウンジャケットを被されたままのグールが立ち上がりかけている事に気付いていない…。

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