印堂 丈一郎の不可解な生活
「だが俺は違う」

その場に声が響いた。

次の瞬間、黒い影が舞い降り。

「っっっっっっ!」

咢の脳天に鍼を突き立てる!

雪城が逆手持ちにした鍼を、咢に貫通させていた。

ついさっきまで仲間だった咢に、何の迷いもなく。

「雪城ぉおぉぉおぉっ!てめぇえぇぇえっ!」

丈一郎が雪城の胸倉を摑む!

「眷属にされちまったらもう殺しちまうのかよぉおおぉっ!情けってものはねぇのかよぉおぉおぉお!」

「ないな」

激昂する丈一郎に対して、雪城は吐き捨てた。

「眷属にされたから殺したんじゃあない。眷属にされたから『こそ』殺したんだ」

咢は調息使いとしての覚悟と誇りを持っている。

化け物を散滅駆逐する使命を持つ者として、命を懸ける覚悟を持っている。

ならばそんな自分が敵の軍門に下ってしまった時はどう考えるか。

化け物に成り下がってでも生き延びたいと思うか。

「情けとは何だ?苦悩しつつ化け物として生かされている咢に殺されてやる事か?」

「……」

雪城の言葉に、丈一郎は絶句する。

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