印堂 丈一郎の不可解な生活
食事の後、丈一郎の意向通りに、お爺ちゃんは早速修行の準備を始めた。

「貴遊」

お爺ちゃんは私に言う。

「しばらく店を空ける。二、三日は休業させておいてくれ」

「え、どこかに行くの?お爺ちゃん」

「無論丈一郎の修行にだ」

お爺ちゃんの背中には、50キロはあろうかというリュックが背負われていた。

もう70歳は超えるお爺ちゃんなのに、こんなものを軽々と背負えるのは、やっぱり調息法のお陰だと思う。

「人智を超えた調息を身に付ける為には、やはり人間社会で修行していては駄目なのだよ、貴遊。私と丈一郎はしばらく山に篭ろうと思う」

< 44 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop