印堂 丈一郎の不可解な生活
棺の蓋が、僅かにずれる。

それだけで。

「うぅっ?」

口元を覆い、鼻を塞ぐ丈一郎。

それは私だって同じ。

何、この酷い臭いはっ?

食べ物が傷んだような…ううん、そんなもんじゃない。

これは車に轢かれた犬や猫の死体が腐敗したような…蛆虫が湧いてくるような饐えた臭い!

棺の中の主はミイラじゃないのっ?

「只のミイラではない」

お爺ちゃんが言う。

「棺の主は眠っていただけ。死んではいなかった。触手で体液を吸ってエネルギーを補充した事で、いわば潤いを取り戻したのだ。渇いた体が水を吸収するようにな」

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