印堂 丈一郎の不可解な生活
「ほぅ…老いぼれ、化け物に対して造詣が深いと見えるな…何者だ?」

棺の蓋が更に開く。

強くなる腐臭。

吐き気を催し、喉の奥がムズムズする。

酸っぱいものが込み上げてくるのを、堪えるのがやっとだ。

事実丈一郎は、一度二度と嘔吐していた。

「調息使いだ。貴様ら化け物の天敵。忌まわしく禍々しい生命を絶って地獄の底へと送り返す者」

「ちょうそく…?…聞かぬ名前だな」

言いながら、棺の主は蓋を完全に開いた。

棺の中から立ち昇るのは、腐敗の末に発生した臭気がガスになったものか。

その中から。

「うっ!」

声を上げる丈一郎。

腐ってブヨブヨになった爛れた青白い手が出て来て、棺の縁を摑んだ。

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