甘い彼。
「そっか…よく耐えたね、桃」


泣きながら話す私を後ろから抱きしめてくれる奏さん。


「…私は、家でね、お前はいらない、望んだ子じゃない、そう言われ続けて育った」


物心ついた時からずっと。


「そんな中で育った私に手を差し伸べてくれたのは羽凜だったの、なのに…その手で私は突き放された」


涙で顔がぐしゃぐしゃになる。


「…せやったら、俺たちが今度は離れへんように手を繋いだるよ」


雅さん…っ。


「お願い…私を……ひとりにしないで」


「当たり前だよ、桃」


「桃羽を一人にはしないよ」


「僕がそばにいてあげるよ、ももっち~」


「ったりめーよ桃羽!俺様がいてやる!」


「当たり前やろー」


奏さん、望月、瑠羽さん、秋良さん、雅さんが順番にそう言ってくれる。


会って間もないこんな私に。
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