Hello!!うつ病!!

3

「今日は遅番の指導、よろしくお願い致します。」
「はいよー。まぁ、頑張ろうね。」
先輩に指導してもらいながら、初の遅番を迎えることとなった。
この人はチャラく見える。更に気分屋の男。ぶっちゃけ苦手だ。
小説内でこの人は、チャラ男先輩と呼ばせてもらう。

「今日の遅番、ヤギママ先生なんだね!」
「そうだよ。先生初めてだから緊張してるの。皆、ヤギママ先生に色々教えてね!」
時間が経つにつれて、子ども、そして保育者達が消えていく。
保育者が一人、また一人と消えていく度に
不安と緊張が高まっていた。
それでも、今日はまだチャラ男先輩も一緒だ。
一人じゃない。何とか頑張れそうな気がした。

「ヤギママ先生は漫画とか読む?俺、結構好きなんだけど。」
「読みますよ。私は大分オタクです。」
時刻は20時。
子どもは4人まで減り、子ども達の希望によりボール遊びをしていた。
チャラ男先輩と俺はバレーボールが好きという共通点があり、
二人でボールの打ち合い(かなり優しく)をして、それを子ども達が見る…という
何故遊んでいるのが大人何だ?現象が起きていた。
その際にチャラ男先輩に聞かれた質問が先程の内容だ。
「マジで?!ちょう意外何だけど!あっ、じゃあさじゃあさ、○○○読んでる?」
「あー、読んでますよ。あれ、△△△の漫画描いてた人が描いてるんですよね。」
「えっ?そうなの?それは知らなかった。でも、漫画好き仲間が増えるのは嬉しいなー。」
子ども達は楽しそうに打ち合いを見ている。
…園長にでも聞かれたら怒られないだろうか?
そんな不安がありながらも、バレーボールだけではなく漫画好きという共通点も見つけられ、
チャラ男先輩への警戒心が少しずつほぐれていったような気がしていた。
ピンポーン
「あっ、誰のお迎えかな?」
スタートダッシュを決めるかのように走り出し、玄関のロックを解除した。

「あとは、りーちゃんとくーちゃんだけだね。」
「ママとパパおそーい」
「おそーい」
「うっし!じゃあ、隣の部屋で遊ぶか。」
元気いっぱいにチャラ男先輩が隣の部屋に移動するよう促す。
そのせいとは言わないが、そのテンションの高さに子ども達も釣られてしまい
隣の部屋のソファでピョンピョン跳ねながらはしゃいでいた。
その時だった。

りーちゃんがソファから床にジャンプした際、着地がうまくいかず
唇の端を噛んでしまい、ほんの少しだが血が出てしまった。
「…ぅ、うええぇん。」
「りーちゃん!?お口見せて?」
「うええぇん。い、痛い」
泣き声を聞いて園長が飛んできた。
「どうしたの?りーちゃん。」
「ソファでジャンプしていて、床にジャンプした際、唇を噛んでしまったようで、少し血が出ています。」
チャラ男先輩が事情説明をする。
りーちゃんは園長と一緒に口をすすいでお茶を飲みに行った。

「お子様に痛い思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません。」
「これぐらい大丈夫ですよ。お気になさらず。」
俺は大分テンパっていた。りーちゃんの親だけではなく、くーちゃんの親にも謝ってしまうくらいテンパっていた。
最後に2家庭をお見送りしてから、園長の所に向かった。

「すみませんでした。」
「今回はヤギママさんだけの責任とは思わないけど、気を付けてね。痛い思いをするのは、私達保育者ではなくて、子どもと保護者だから。何でこういう風になってしまったのか、しっかり考えて。」
叱られながら、
お子様に怪我をさせてしまったことが申し訳なさすぎて、
初めてでどうしたら良いのかわからなすぎて、
遂には泣き出してしまった。
それを見て園長は見るからに動揺してしまっていた。
「いや、でもね!私が初めて子どもを怪我させてしまった時はもっとひどくてね!」
自分の怪我をさせてしまった初体験を語り、だから大丈夫…いや、怪我は大丈夫じゃないんだけど、と自分でノリツッコミを入れている。
その様が少し俺を安心させてくれた。
「…えっと、あっそうだ!記録の書き方も教えてもらっておいで」
この園は怪我や事故が起きたら書類に書いて記録に残さなければならない。
残りの遅番仕事と記録を教えてもらいにチャラ男先輩の所に行った。

「戻るのが遅くなりすみませんでした。」
「あー、大丈夫。」
「あと、すみません。怪我の記録の書き方も教えていただいてよろしいでしょうか?園長先生が教えてもらっておいで、と言っていて」
「え?まじかよ。チッ、面倒くせ」
この瞬間、舌打ちをされた瞬間
俺の中で、チャラ男先輩に対する好感度は全てが粉々に砕けた。
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