立花課長は今日も不機嫌
「……誰のですか?」
「誰って、俺の他に誰がいるんだよ」
細められた目で軽く睨まれて、さっきまでの穏やかな表情とのギャップに竦み上がる。
……どうして立花さんのナンバーを私に?
訳の分からない事態に急加速で高鳴り始める鼓動。
「何かあったら連絡よこせ」
何かって……。
「どうしてですか?」
「どうしてって……いろいろ大変なんだろ?」
――っ。
立花さんの優しい眼差しを見て、嫌なことを思い出してしまった。
“親の遺した借金”
私が立花さんに吐いた嘘だ。