立花課長は今日も不機嫌
小突こうと思わず出た手が、あっさりと立花さんの左手に取られた。
――……
ドキっとして、迷わず引っ込める。
カーッと熱くなる頬に気付かれないように、俯いて髪で隠した。
流れる微妙な空気にいたたまれなくなる。
「……で、どこなんだよ」
「え?」
「佐伯の家」
「――あっ」
そうだった。
私の家。
……と窓の外を見たところで、やっぱり分からない。
あてにならない私を見かねた立花さんは、路肩に車を停めると
「住所は?」
ナビを操作し始めた。
そうだ。
それを使えばいいのだ。
……よかった、これで帰れる。
「目的地までおよそ20分です」
ナビの音声案内で、思った以上に遠くまで来てしまったことを思い知ったのだった。