立花課長は今日も不機嫌

「……は?」


ボソッと告げた単語に、立花さんが目を見開く。


「お酒を飲んだらキス魔になるって」

「へ?」

「女の人なら、見境なくキスするって」


良樹さんが私にこっそり耳打ちしたことだった。


そんなところは絶対に見たくない。
それが公にされたキスシーンだからとかいうことじゃなく


……立花さんだから。


立花さんが誰かとキスしてるところなんて……見たくないから。

その一心で、こんなところへ立花さんを無理矢理引っ張り込んでしまったのだった。


今この瞬間わかってしまった。
――立花さんに恋に落ちたことを。


“落ちる”という表現がいかに正しいか。

それは正にストンと。
突然現れた落とし穴に吸い込まれるように。

そして、そう悟ったときの収まりの良さ。


美しい文字に惹かれただけじゃなく、辛口の裏に隠された優しさに触れるうちに、立花さん以外は目に入らなくなっていた。


今、確かに胸に感じる熱っぽさは、誤魔化しようもないほどに。


いつの間にか大きく膨らんでいた恋心。
それをこんなところで気付かされてしまった。
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