立花課長は今日も不機嫌

指定されたミーティングルームの前で足を止めると、速足で来たせいばかりじゃない鼓動を鎮めるべく、深呼吸を繰り返す。

ノックしてドアを開けると、立花さんはテーブルの上で手を組んで座っていた。


「……お待たせしました」


初めてここへ呼び出されたとき同様、手で座るように指示をする。

それに従い腰を下ろして顔を上げると、厳しい顔つきだった立花さんが、ふとその表情を解いた。


「無事に帰れたようだな」

「あ、はい」


その柔らかい表情にドキッとしながら答える。


「兄貴のことも含めて、いろいろ悪かった」

「――いえっ、そんなことは全然」


そもそも、変な勘違いをして立花さんを会場から連れ出したのは私だ。

< 188 / 412 >

この作品をシェア

pagetop