立花課長は今日も不機嫌
指定されたミーティングルームの前で足を止めると、速足で来たせいばかりじゃない鼓動を鎮めるべく、深呼吸を繰り返す。
ノックしてドアを開けると、立花さんはテーブルの上で手を組んで座っていた。
「……お待たせしました」
初めてここへ呼び出されたとき同様、手で座るように指示をする。
それに従い腰を下ろして顔を上げると、厳しい顔つきだった立花さんが、ふとその表情を解いた。
「無事に帰れたようだな」
「あ、はい」
その柔らかい表情にドキッとしながら答える。
「兄貴のことも含めて、いろいろ悪かった」
「――いえっ、そんなことは全然」
そもそも、変な勘違いをして立花さんを会場から連れ出したのは私だ。