立花課長は今日も不機嫌

「もしも何か困ったことがあったら、いつでも僕にご連絡ください。……とはいっても、僕の出る幕なんてないでしょうけどね」


ハハハと無理に笑い飛ばすから、かえってそれが胸に染みる。


「ありがとうございます、岩瀬さん」


それじゃ、おやすみなさいと礼儀正しく頭を下げ、岩瀬さんはトボトボと歩き出したのだった。

少し寂しげに見える背中を見送っているときだった。


「……杏奈さん、ですよね?」


突然掛けられた声に振り向く。


「――入江くん!?」


思わず声に出してしまってから、慌てて口元を覆う。


バニーちゃんの格好をしているというのに、不意を突かれたせいで、つい反応してしまった。
つくづく愚かだ。

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