立花課長は今日も不機嫌

「やっぱり杏奈さんでしたか」


もう手遅れかもしれないけれど、ここはしらばっくれてしまおう。
近づきかけた入江くんを振り切るように、お店のドアに手を掛ける。


――とそこで


「あ! ちょっと待ってくださいよ! なんで逃げるんですか!」


そんなことは許さないと、入江くんの手が腕に掛かった。


「こんなところで何してるんですか? ――あ! 沙月さんと話してたバニーちゃんってこのことだったんですか!?」


もう逃げられない。
観念して頷いた。


「……もしかして、立花さんがかばった相手って杏奈さんのこと?」


入江くんにしては頭の回転が速い。
簡単にその答えに行き着かれてしまった。

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