立花課長は今日も不機嫌

「だって、鳥塚専務って一度見た人の顔は忘れないって話だよ」

「だからって、私の顔まで覚えてるとは……」


見たことすらないかもしれない。


「やだ、忘れたの? 入社試験のときの三次面接は鳥塚専務だったじゃない」

「……そうだった?」


そんなことさえ覚えていないという、いつものこととはいえ私の鈍感っぷりには、さすがに自分でも呆れた。


でも……


「ちょっとこれ見て」


バッグから携帯を取り出し、沙月にバニーちゃんスタイルで撮影した写真を見せる。


「……これ、杏奈?」


頷くと、沙月は


「えーっ、嘘でしょ!? 全然別人じゃない」


と、狙い通りの素っ頓狂な声を上げた。

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