立花課長は今日も不機嫌
その人がおもむろに名刺を差し出した。
「私は、立花良樹って言うの。まぁ、良樹っていうよりは良子ってところかしら」
えっ、“立花”?
立花さんの顔を思わず見上げる。
すると立花さんは、苦笑いで髪の毛を掻き毟っていた。
「この近くでブルースカイっていうバーをやってるの。今度ぜひ来てちょうだい」
口元に手を当ててフフフと微笑む。
「……あの……立花さんとは、」
「あぁ、立花さんって、海人のこと? 海人はね、私の――」
「おいっ、やめろっ」
立花さんの手が伸びて、良樹さんの口元を塞ぐ。
「んっ――」
立花さんの腕の中でもがき始める良樹さん。
それでもどうにかこうにかその手から逃れた。