女神の微笑み
アヤは母、菜々子の死が近いことを承知の上で、でも決してそんなことは、一言も口にせず、態度にも見せず、いつもの笑顔で仕事を続け、ぐんぐんと売り上げを伸ばし続けた。

強い子…でも春美には、このアヤの強さは、切なかった。

強く魅せるアヤが、切なかった。

この時春美は思った。

私の胸で、いや、私じゃなくてもせめて誰かの胸で、おもいっきり、泣かせてあげたいって。

そんなに頑張らなくていいんだよって。

言ってあげたかった。

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