春色最中のコンチェルト
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「最中、最中」

「んー…祐介…」


祐介が私を揺り起こしている。

怖い夢を見ていた気がする。

祐介に気安くフラれる夢。

嫌な夢だ。

良かった、祐介はちゃんといるんだ。


うっすらと目を開けると、

「え!?青磁くんっ!?」

どアップの青磁くんの顔が目の前にあった。


夢じゃ、ない。


「あっ、もう駅!?」

慌てて荷物をかき集めると、優しく手を抑えられた。


「…いや。まだ三分くらいあるから…」


目が合った瞬間、触れられた手を引っ込めてしまった。

「お、起こしてくれてありがと」

恐る恐るお礼を言うと、青磁くんはフイッと顔を背けた。


「別に…最中を連れてかんと本末転倒やし」


そっか、と呟いて身支度を整える。

ダッフルコートのボタンを全部しっかりかけ、トランクとボストンとミニバッグは膝と床の上。


これでいつでも出られるだろう。

家具は郵送だし…と考えていると、青磁くんがこちらを向いた。

びくりと肩が揺れる。


「なぁ」

「え?」

「祐介って…」

「ああ、元彼」


スルリと言葉が滑り出たのに驚いた。

もうあっさり元彼、と言えるくらいになったのか。

案外薄情だな自分。

収まるべき所に収まってくれたならそれに越したことはないけれど。


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