春色最中のコンチェルト
***

「あぁっ、最中ちゃーん!」

地面に降りた瞬間、窒息。

「んぐっ…」


死ぬ死ぬ死ぬ!誰!

誰かの腕の中でもがいていると、青磁くんの静かな声が微かに聞こえてきた。


「…母さん。最中が窒息するやろ」


どうやら青磁くんのお母さん、静香おばさんらしい。


「あらっごめんなさいねぇ!」

やっと解放されて、はぁはぁ喘ぎながら静香おばさんを見る。


変わってない。


「静香おばさん…お久しぶりです」


おばさんはふんわりと包み込むような笑顔が魅力的な女性だ。


「最中ちゃん、ほんま綺麗になったね。櫻子も喜ぶわ」

櫻子は私の母親だ。


「そうですかー?ありがとうございます」


一応笑って返したけれど、母さんが喜ぶわけがない。

綺麗になった、とか周りに目が行くような人じゃないからだ。


「さっ、最中ちゃん行こかー!青磁、荷物持ったげ」

私のトランクを見やり、静香おばさんが青磁くんに命令した。


「…ん。ちょうだい」

「え、いいよ大丈夫だから…」


思わず遠慮すると、静香おばさんがニヤリと笑う。


「ええのよ、青磁も男やねんから。でもなぁ最中ちゃんほんまに標準語なったなぁ」

「あ、はい」

「お家戻るんやろ?そしたら…うーん、ふうわりの売り子さんかなぁ」

「どうでしょう?父が許してくれるかどうか…」

「厨房はさすがに無理やと思うけど…売り子さん位やったらやらしてくれるんちゃうかなぁ。関西弁、まだ喋れる?」


静香さんの真剣な顔にクスッと笑みがこぼれた。
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