黄昏と嘘

「やっと終わった……」

アキラは小さな声でそうつぶやき、チサトを置いてひとり、本屋を出る。
とにかく早く帰ってひとりになりたい、
ここ最近、彼女に関わるといつもの状態を保てなくなってしまいそうになる、そう感じていた。

今日だってこうして本を買うのにもひとりで行けばいいものを結局はつき合わされてしまった。
チサトにあんな顔して懇願されたのでは自分自身ものすごい罪人のように感じたからだ。

でもそれでもいいと、そう望んで、だからひとと接することを避けて今までも過ごしていたのにどうして彼女の表情を見て最後まで断れなかったのか。

いろんな面で優秀だと言われてきたアキラもさすがにまだ自分の中でチサトの存在がとくべつになりつつあることに気付いてはいなかった。

彼女は彼にとってただの不思議な一学生なのだ。

他の学生たちからは冷たい、優しくない、冷血などと言われ、近づいてくる者もいなかったのに、チサトだけは違っていたから。


「先生っ!!」

背後から大きなチサトの呼び声が聞こえ、アキラは立ち止まり、振り返る。
そこには顔を真っ赤にして、焦った表情をしたチサトが立っていた。

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