黄昏と嘘

「いつまでなんて期限はない」

アキラはノートパソコンに目を向けたまま答える。

「私の名前知ってますか?
日ノ岡 チサトですよ?」

「わかってる」

アキラは彼女が言葉を発し終わらないうちに答え、まだ時間があったのか側にあったタバコを取り出し、火をつけた。


あ、それって私が買ったタバコかな。


チサトは嬉しくなる。
タバコを買うためにカードを作ったチサトは、アキラから頼まれる前に、頃合いを見計らって用意し、常にキッチンのテーブルの上に置いておくようにしていた。

ここにいるのは彼とチサトしかいない、だからアキラは何も言わないが、チサトが用意したものだときっとわかってくれているはずだ。
そんなこと思うと、チサトは「キミ」と呼ぶことも「まあいいか」と許せてしまう。


「先生・・・」

「・・・ホラ、僕のこと、先生って呼んだ。
だからそれと同じだって言ってるだろう?」


そんなアキラの言葉にチサトは笑う。
思わずアキラはころころと笑う、チサトのほうを見る。

そして手が止まる。

彼女が笑う、いつものとおり、思った通りの笑顔で。

そう認識するとアキラは自分で気付かないうちにそれまでのひとと関わりたくない、そんな感情が消えそうになってしまう。

いつからそんなふうに思うようになってしまったのか。
アキラはそんな思いを打ち消そうと、吐き出した息とともに部屋に浮かぶタバコの煙を見上げる。


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