黄昏と嘘

「元気・・・です。すごく元気です!
石田さんもお元気でした?」


チサトのはずむ声にモモカは電話の向こうでくすくすと笑う。


「元気よ?
東京の生活と別れてこっちに戻る時はうまくやっていけるかなあなんて思ってたけど・・・。
まあ、戻ってしまえばこんなもんね。
結局、地元だからすぐに馴染んじゃった」


地元に戻っても彼女らしく、頑張っているなんて流石だな、とチサトは思った。
彼女くらいの才女で美人ならずっと東京にいるほうがいいのにと思ったこともあったけれど、どこに行ってもやっぱりモモカは彼女らしく生きている。

やっぱりモモカはチサトにとって憧れの女性だ。


「遊びに行くって言いながらなかなか・・・」


チサトは常々、モモカに会いたいと、そしていろんな話をしたいと思っていた。
しかし彼女とは嘘をついて別れてしまったから、会いたいと自分からはどうしても言えずにいた。

・・・もしかしたら嘘がバレてしまったのだろうか、一瞬そんな不安がよぎる。
そんな不安が生まれるとさっきの言葉の続きが出てこない。


「・・・あ、あの・・・」

「?・・・。どうしたの?チサトちゃん?」

モモカの声を聞く限りではどうやら嘘がバレた、という風でもないらしい。

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