黄昏と嘘
「・・・だれなんだ?」
「高校の時に付き合っていたひとよ?」
リョウコはアキラとは目を合わせないで答える。
アキラがその彼の存在に気づいたのは、リョウコが彼の連絡先のメモをそのまま机の上に置いて忘れていたからだった。
それは本当にうっかりしていたからなのか、作為的なのか、リョウコ自身にも、もうわからなくなっていた。
「今も会ってるの」
「・・・どうして・・・」
『どうして』、アキラのそこの言葉にリョウコは感情をあらわに訴えるようにアキラに詰め寄る。
「どうして?・・・だって、あなた、私が淋しいときに側にいてくれなかったじゃないっ!、いつも仕事、仕事って!」
「それは・・・キミのために・・・」
自分が望んでいたものはそんなものじゃない、どうしてそれをわかってくれないのか。
望んでもいないものを自分のためだと言われても嬉しくもなんともない。
彼のその言葉にリョウコは余計に大きな声になる。
「いつも、いつも私のためにって?
私が・・・私が望んでいたものはそんなものじゃないわ」
「じゃあ、その男はリョウコの望みを叶えてくれるとでもいうのか?」
「ええ、ええ、そうよ。
アキラよりもずっと。
自分の価値観をそのまま私に押し付けないで!」
リョウコの言葉にアキラは狼狽する。
自分のやってきたことは間違っているのか、どこでも誰にも恥じないよう、惨めな思いはさせたくないからとふたりのために一生懸命やってきたというのに。
なのにそんな自分を置いて彼女は他の男と時間を過ごし、嘲笑っていたのか?