黄昏と嘘
・・・それは思い過ごしだっかもしれない、余計なお世話だったかもしれない。
しかしチサトはそのままクロゼットの中では事が終わるまでおとなしくしていることができなかった。
アキラを見てはいられなかった。
思わずカラダが動いて、気がつくとリビングのドアを大きく開けて中へと入っていた。
勢いよく開けた扉の音に驚いた顔のふたりがこちらを見る。
チサトはふたりの視線にはっとするも足元に置いてあったカゴにつまづいてこけそうになってしまう。
バランスを崩しかけたけれど、チサトはどうにか体勢を持ち直す。
とても驚いた表情をするふたり、アキラもそうだったけれどその女性は特にびっくりした顔をしてチサトを見る。
でもそれは当然のことだろう。
男性の一人暮らしだと思い込んでいたら実は女が一緒にいて、しかもその女が部屋に慌てて飛び出してきたなんて。
「・・・もう・・・帰ってくださいっ!
お願いします」
でもチサトはそんなことを思う余裕もなく、ただ必死で今、目の前にいる女性に懇願する。
「え・・・?」
「・・・お願いします!」
彼女は身体をチサトの方に向け、何も答えず苦笑しながらチサトを見て、それから再びアキラの方へ向き直る。
「・・・とりあえずちゃんと謝って報告だけしておこうと思っただけだから。
お邪魔してごめんなさいね」
そう言って静かに笑う。