黄昏と嘘

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チサトは少しでも少しでも早くアキラと離れたくて出てきたけれど、駅の窓口で予約しておいた指定席券を引き換えてもらっあと、時間まで何もすることもなく、引き替えた切符をぼんやりと見つめる。

時間までまだあるし、どうしようか。
どこか売店とか駅カフェで時間でもつぶすしかないかな。

特急に乗らなくても時間はかかるが帰ることはできる。
トップシーズンでもなければ混雑する時間帯でもない。
けれど早くここを離れたいって思い、特急指定を買った。
その切符を見ることで実家に戻るんだと強く自分自身に意識させるために。

チサトは荷物の入ってるキャリーケースを周りひとたちの邪魔にならないようホームの椅子の隅に寄せて、とりあえずホームの隅にあるベンチに腰掛ける。

ひとつため息をついて顔を上げ周りを見るとたくさんの人が行き来している。
忙しそうに時計を見て走っているひと、親子連れ、チサトと同じようにどこかへ行くのか帰るのか、キャリーケースを持ったひと。


みんなどこへ行くんだろう?
・・・私もそんなふうに見られてるのかな?
せっかく先生にさよならって言えたから早くこの気持ちが挫けてしまう前に帰ってしまいたい。


ベンチに座り、時間が過ぎるのを待っているといろんなことを考えてしまい、気持ちが揺らいでしまうように感じた。

でもこれが最後ではないのだから、チサトは自分にそう言い聞かせる。
もう二度とアキラに会えなくなるわけではない。
また大学に行って、いつもの授業があって、そしたらまた彼に会えるのだから。
それなのにどうしてこんなに淋しいと感じてしまうのだろうか。

それはチサトがアキラに近づきすぎたから。
今までのように何も知らないままでいれば、ここまで思い煩うこともなかっただろう。

ただ、元に戻るだけなのに。



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