黄昏と嘘
彼はチサトが残した住所を書いたメモを持っていて、その裏に彼女が書いた言葉を見せ、小さくため息をついた。
「それは・・・」
自分はアキラを傷つけ、もう二度と彼をリョウコの元に戻れないようにしてしまったと、だから彼の元を去るしかないとそう思っての行動だった。
でもそれは違っていた。
チサトの想いはアキラにちゃんと伝わり、彼も彼女の想いに応えたのだ。
「本当なら、キミが卒業するまでは今の状態は決して良いと言えるものでもない。
だからお互いの立場上、これからしばらくは大変かもしれないが・・・」
心配そうに言うアキラにチサトは笑顔で答える。
「それくらい・・・きっと大丈夫ですよ!」
「全くキミは・・・」
少しあきれた顔をして、それからアキラはふっと笑う。
そしてふと思った。
ああ、そうだ、彼女のこういうところにきっと惹かれたのだろう。
「・・・キミをこっちに引き止めてしまった以上、住むところをどうにかしないといけないか・・・」
アキラが思い出したようにホームに入ってきた電車を見ながらポツリと言った。
チサトが彼の視線と同じ方に目を向けると彼の見つめる電車がゆっくりとスピードを落とす。
「・・・別に今のままでも・・・」
「それはできないだろう。
これからの二人のためにもそういうことはきちんとしておかないと。
キミが卒業するまでは」
そう言って視線をチサトに戻す。