黄昏と嘘

リョウコが家に尋ねてきてあんなことになってしまい、それでも彼女のことを言ってもいいのか、チサトは少し躊躇しながら彼を見つめ、口を開く。

「それは・・・私が・・・」

考えながら話そうとする彼女を察したようにアキラは言った。

「いや、もういい。
ただ、あのとき言いたかったのは・・・僕はずっと彼女のことを忘れられないんだってそう思ってた」

彼から聞く初めての「大切」な「彼女」の話。

「・・・そう、あの日、彼女が家に訪ねてくるまでは・・・。
でも彼女から結婚の話を聞いて、キミがクロゼットから飛び出してきたとき、・・・うまく言えないが・・・。
すごく安心したんだ」

よかったと思えたっていうことは自分のやったことはアキラを傷つけることはなかったのだろうか?
そう言われてもまだ少し不安はぬぐえない。

「それでやっとわかったんだ。
キミが僕の前に現れてから多分・・・。
気がついたときには僕の中でキミがあまりにも大きな存在になっていた」

そのアキラの言葉にチサトの中にあった緊張と不安が解ける。
我慢していた涙が彼女の頬を伝うと彼のやさしい指がそっと涙を拭う。

「だからホントにそんな僕に・・・自分でも驚いているんだ。
さっきもそう言いたかったのに自分だけ言いたいことを言って、勝手なことをして・・・」

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