黄昏と嘘
「先生……、あの、日ノ岡です……、今日、東京に戻りました」
チサトはできるだけ震えそうになる声をおさえながら言ったつもりだった。
しかし彼女の言葉にアキラは何も答えず、インターホンを切った。
その切れる「プチッ」と言う音でチサトはもしかして無視されたのだろうかと急に不安になり、慌ててもう一度、インターホンでアキラの部屋の番号を呼び出す。
「……あのっ!先生、私……」
「わかっている、だから、扉が開いてるだろう?
さっさと上がりなさい」
「え……?」
彼女が中央のほうを見ると、アキラの言った通り、マンションの住居内部に通じる大きなガラス張りの自動扉が開いていた。
あ・・・、なんだ、無視されたんじゃなかったのか・・・。
扉を開けてくれたのならちゃんとそう言ってくれればいいのに。
でもアキラの性格ではそんなこと気の利いたことを言ってくれるはずもない。
彼女は苦笑し、急がないと扉が閉まってしまう、そう思い慌ててエレベーターへと向かった。