ありふれた恋でいいから
そんな私の胸の内を貴博は知っていたのだろうか。

もしかしたら私も始まりは“浮気相手の一人”だったのだろうか。

幾度となく繰り返される浮気に振り回されながらも。
不実な理由で彼を受け入れた私には、それを強く突っぱねることが出来なかった。

貴博にごめんと謝られると。
畑野くんに似たその声で謝られると、どうしても突き放せなくて、部屋に帰ってくる貴博とずるずると一緒に過ごす。

…どこか逸脱した関係に、さすがにもう潮時だろうといつになく強い態度に出たのだけれど。
家主の私が家を飛び出して来た以上、あの部屋から貴博を追い出す人は誰もいない。

信じるってなんだろう。
私たちが一緒にいる理由って何なんだろう。
考えることに、少し、疲れてしまった……。
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